10/28/2022

『瓢箪から駒の授業』 校長エッセー 第一回

「へんとつくり」という単元が3年生にあり、3枚のイラストを見せて それに当てはまる3つの漢字を予想するという導入をしました。

「さんずい」という共通点を見つけて欲しかったので、ランダムに選んだ「泳ぐ」「流れる」「お湯」の漢字を選びました。
白板には、「①プール」「②桃」「③やかん」のイラストが掲示されており、それに関連する漢字を当てはめる部分は空欄です。

「プールは、うーん、『泳ぐ』じゃない?」
とか
「桃は、どんぶらこっこだよ」
「違うよー、そんな漢字はないよ」
とか
「ポット(やかんという単語が中々出てきません)は、湯気?」
とかいろいろな予想が出てきます。

ある程度の答えが出尽くしたところで、「では、正解は」と私が漢字を書こうとすると、なんと「待った!」の声がかかったのです。
「自分で書きたい」と。

でも、3年生の既習の漢字を特別に選んだ訳ではないので、教科書や副教材を見ても答えの漢字は載っていません。
また、漢字の練習が目当てではないので、ヒントなどは用意していませんでした。
私が少し戸惑っていると、「待って」と言われ、それぞれが、それぞれの手段で漢字を探そうとし始めました。


教科書の一番後ろの漢字一覧をめくる子、副教材を1ページ目から探す子。。。その時、一人の子が、
「辞典にあった!」
と叫びました。
「泳ぐ」で探したようです。
一斉に、辞書を箱ケースから取り出すポンという音がして、さらさらとページをめくる音がそれに続きました。




「私も見つけた。泳ぐって書ける」
「僕は、流れるを見つけた」
「お湯が答えじゃない?」

と大騒ぎです。
白板の空欄には、生徒たちに答えの漢字を書いてもらいました。
教室に一斉に同じ音が響く瞬間って、とても気持ちが良いものです。


教師側が意図した方向ではない方に活動が進むのは、悪い場合もあると思いますが、今回のように、自主的な活動につながる良い場合もあると思います。
自分の生徒に気持ちよく一本取られた日でした。


来週は、「やかん」を辞書で探してみようかと思います。 どうせ死語を扱うなら、「とっくりセーター」「ジーパン」「衣紋掛け」なども探してみようかなあ。
母に言われて、「ふっるーい」と散々馬鹿にした覚えがあります。
(母よ、すまん)
でも、生徒に取ってはピンとこないので、笑いも起きないだろうなとも予想されます。

ちょっとだけ脱線する余裕がある、そしてそれが許されるのが本来の「ゆとり教育」だと考えています。
今回は、瓢箪から駒の授業になって、教師の意図を超えていく活動を見せてくれた生徒たちを心から褒めたいと思いました。